銀嶺城、二階テラスはその日も柔らかい日差しが差し込んでいた。
 「今日は天気がいいから、テラスで会議」という、誰も異を唱えられない発案に、それ
ぞれは無言で席を立った。




「……ティントからの報告では、漸く戦後復興事業が具体的に開始された、だそうだ」
「救援物資の輸送は?」
「輸送自体を締南が受け持ち、輸送の為のインフラ整備はティントに、と言う形で落ち着
いてる。
 石工の技術はお家芸だからな、余計は口は挟まないが得策だ」
「輸送部隊の編成はどうまとまった?」
「警護人員はマチルダ騎士団の遊撃部隊を主軸に、輸送自体の人手は国境の村街から募集
した」
「集まり具合は?」
「長期の出稼ぎ労働になるが国内の経済が落ち着いている今、降って湧いた労働に、それ
なりに興味と好感を持っているようだな。
 グラスランドの状況が状況だから、一旗上げようという気概の者も多く、ビュッテヒュ
ッケ城で商いを営もうと言う人間が多く募っている」
「皆元気で結構なことだね」
「チシャとの交易ルートは確立しているが、それでも個人の?がりであるのが現状だから
な、これを機会にグラスランドとの交易のパイプが太くなれば、こちらとしては上出来だ」
「トランはどうですか?」
「貿易相手が増えたって、レパントが嬉しがっていたよ。
 ちょっと入港税・滞在税を高めに取っているのが腑に落ちないところだけどね。
 まぁその分、物の値段は相応に設定しているわけだからおあいこだ。状況が落ち着けば、
条約やら約束事を明確に出来るだろうしね…」
「どうやらそれぞれ、落ち着きを取り戻したようじゃな…」
「そういえば、テレーズさんから手紙貰ったんだけど、カラヤのルシアさんがこれからの為
にグリンヒルに留学してきたんだってさ」
「……あの単身暗殺に乗り込んできた族長がか?」
疑いの表情のシュウ。
「うん。学長のエミリアさん、私が責任を持って!ってはりきってた。
 ……責任を持って恋愛小説を読ませ続けなきゃいいなぁ〜」





 会議は目処がつくと、机に広げられていた書類を整える。
「うーん、今日は鉄観音茶で」
「西湖龍井茶」
「僕はアッサム」
「ふむ偶には茶も良いか…、茉莉龍珠。宜しくな茶坊主」

「茶坊主って誰のこと?」
不愉快で機嫌の悪い低い声だった。

「通称『魔法兵団長』」

「こまっしゃくれたクソ餓鬼じゃな。……最近なんというたか、……ちゅう?」

「じゃ、るっくんに違いないね」

「…………」

「諦めろルック、彼らの相手をして敵うものでもないだろう」
毎日繰り広げられているそれぞれの言い合いに慣れているシュウが止めに入る。
「俺は構わんが論破する事が出来るなら、続けて構わんぞ」
「…………」
ルックは心底嫌そうな表情を見せると、勢いよく席を立って厨房の中に消えた。
「セラ、そなたはここに待つようにな」
 ルックについて行こうと腰を上げた、今まで天威たちの会話を黙って聴いていたセラを
引き止めた。
「そなたが行って、仕事をしてしまえば、立たした意味が無い」
その言いようは親のように教師のように、重みのある言葉で。
「でも…」
「でももへちまもないよ。
 これは罰だからね、ルックにやってもらわなきゃいけないことだよ。
 まぁ家事スキルはレックナートの城で培っているだろうから、面倒くさいだけだろうに」
ヤレヤレと肩を竦める英雄。
「ルックの世界をもっと広くして欲しいから」
茶菓子を口に含む国主。
「でも、城の外には出せないんだけどね〜」
「まぁ向こう30年くらいは外に出せないでしょ…。だからって、全く外に出さないわけじ
ゃないし、その際は僕付きだけどね」
 すなわち、ルッくん使い走り確定的に明らかであった。





 渋々煎れられたお茶はそれでも美味しいものだった。口をへの字に歪ませたルックも自
分とセラの分を用意して席についた。ついでに甘みを抑えたミルクティーである。
「ねえ、ルックが茶坊主ならセラはどうしてるの?」
 新しく持ってこられた菓子を口に放り込みながら、イーヴァが訊ねた。
「うん、セラには司書さんやってもらってる」
「わ〜、適材適所だな」
「ホントは、子離れ親離れさせた方がいいかな〜とも思ったんだけどね、何かあった時が
心配だったから。
 まぁ仕事の内容が違うし、セラには外にもお使い出てもらってるからいいかなって」
「セラ、仕事には慣れたか?」
「はい…。城の蔵書量は凄いものですし、たくさんの書物が見れて楽しいです。
 それに…」
 シエラが言葉を急かす。
「今、図書館に遊びに来る子ども達に絵本を読んで上げてるんです…。
 私、そんなに本を読んであげる事が上手くは無いのですが、それでも読んで欲しいって
いわれるのが嬉しくて……」
控えめに笑って見せた顔は、柔らかな優しいものだった。
「セラは親離れ第一歩、かな」
「コドモの方が成長が早いって、本当なんだな」


「……キミ達、いい度胸してるよね」


 テラスの一角が冷えこんでも気にしない。
 今日も銀嶺城は穏やか。
 そんな、誰も知らないハッピーデッドエンディング。
 







 (last up 2009 2/9)   
 年を跨いでしまいました。。
 理由は単純、ゲームにハマってしまっていたから。
 
 P4 ⇒ DDFF ⇒ FF11

 ティアクライス買う余裕がありません。積ゲーにフラジールが潜んでいる罠。
 ですが、幻水2ドラマCDは発注完了。
 声が誰であろうと、石川嬢のイラストなら買いますとも!

 汚いなさすがコ●ミきたない

 がピッタリだ…。