古き英雄から 16 










「どうやらフラれたみたいだな」
そう声をかけたのは金髪ナンパ男だった。
「そう言うあんたはどうなんだい?」
無口なゲドの代わりにクィーンが聞き返した。
「そりゃぁ、訊くことが野暮ってもんでしょうが…」
と頭を掻きながら答えた。
「しっかしまぁ、この国はおかしな国だねぇ」
ナッシュの視線の先には天威達がいた。当然、彼らの会話姿が映っている。
「一番、安全な場所でひっくり返ってなきゃいけない人物が、一番危険な場所まで出
て来るんだからな。
 ハルモニアじゃ考えられないことだよ」
 15年前、共に戦ったテレーズやマイクロトフも確認できた。
「その事で訊きたいのだが……」
「俺の分かる程度ならね」
「あの少年、一体何者だ?」
 結局、訊きそびれてしまった。というより、逃げられてしまった。
「……何者だって、言われてもねぇ。この国で『天威』って呼ばれている人間のこと
を考えたら、当てはまる人物は一人しか心当たりがないんだけど…?」
「…………」
 15年前の統一戦争の英雄・天威。
 統一後、国の代表となり、その務めを果たしているという事は聞くが、実際は彼自
身が表に出てくることはなく、宰相であるシュウが、そして現在は、デュナン国大統
領の任に着くテレーズ・ワイズメルが担っている。
 聞くところによると、彼自身は、銀嶺城で静かに暮らしている…、との事らしいが。
彼が、この締南国の国主であることには変わりはない。
「じゃあ、やっぱりあの線の細い子が、この国の国主って訳なのかい?」
「そうだろうねぇ。宰相殿が頭下げるんだぜ。他に誰がいるんだよ」
 正論である。
「あの少年の紋章、お前達は把握していたのか?」
「んにゃ。俺は未確認だね」
 目の当たりにして、凄まじい威力である。二つの属性を有する紋章などそうある物
ではない。これでまた、火種が一つ増えたということなるだろう。
「ナッシュ、国主サマの隣の少年、誰か知ってるのかい?」
 緑のバンダナの少年を指している。
「……まぁ推測だけど、イーヴァ・マクドール、なんじゃないのかな?」
「イーヴァ?」
「隣国トランの建国の英雄。赤月帝国六将軍テオ・マクドールの嫡子にして、反乱軍
のリーダー。そして…」
「そして?」
「呪いの紋章、魂喰らいの紋章の継承者」
「ソウルイーター?」
「ぽんぴ〜ん」
「隣国の英雄が何故?」
「さぁ、そんなことまでは流石に知らないよ」
「じゃあ、あのシエラッて娘、あんたと一体どういう関係なんだい?」
 瞬時にして空気が凍り付く。
「……クィーン、あんた俺に何か恨みでもあったっけ?」
「あんた個人には何の恨みもないけど、ハルモニアって視点で見たら山ほどあるさ」
「……とりあえずその事に関してのコメントは控えておくよ」
「で、どうなんだい?」
 クィーンは意地の悪そうな瞳で追い打ちをかけた。
 ナッシュは大きな溜め息と哀愁漂う気配を放ち、重い口を開いた。
「…………え〜と、なんだっけ?」
「あの白いお嬢ちゃんのこと」
「ああ左様でしたね。
 ……シエラ。まぁ隠し様なく、彼女もまた真の紋章の継承者だ」
「何の紋章の、なんだ?」
「月の紋章」
「……吸血鬼ネクロードに奪われていたっていう、あの?」
「そう。15年前の統一戦争時に取り返したそうだな」
 俺も、その事は詳しく知らないけど、と付け足した。
「ならば、あそこにいる連中は全員が15年前の繋がりか?」
「それ以外にないんじゃないの?」
 ナッシュはそれ以上の説明は控えた。聞かれていないことを話すことはないし、話
す必要性もないから。
「皆さんっ、無事ですかっ!!」
 息の上がった、少しうわずった声が背後から響いた。
 青い長いスカートの裾を翻しながら、軍師アップルが肩で息をしながらこちらに向
かってきた。
「アップル」
「軍師さん、あんまり慣れないことはしない方がいいよ。そのスカートで転けたら大
変だぜ」
という心配の声に対して、にっこりアップルは
「大丈夫です。慣れました」
 それって何度も転けてるって事ですか?と咄嗟につっこみを入れたい衝動に駆られ
てしまった。
「とりあえず、私らの方は無事無傷ってところだよ。他の連中はどうか知らないけど
ね」
「そうですか。こちらは、ヒューゴさん達は宿に戻ってます。流石に無傷ではありま
せんけど、大事はありません」
 当然ですけど。と付け足した。
「で、アップル。ここまでどうしたの?」
「皆さんの無事の確認です。その後、その報告をするつもりです」
「誰に?」
「ヒューゴさんにもですし、天さんにです」
「……天威、に?」
 三人は一斉に訝しげな表情になった。
「ええ。今回の事、心配されてるでしょうし。必要なことですからね。
 それにこの後のことも聞いておかなければなりませんから」
「この後のこと?」
「これだけ派手なことが起こりましたから、明日の予定が変わらないとも限りません
し…」
 そうアップルが応えた時、突然、空から風が吹き付けてきた。
 一体何がと、見上げると、ブライトに乗ったフッチがゆっくりと下降して来た。
「アップルさんっ」
「フッチ、様子はどう?」
 鞍から軽やかに降り立つとブライトを宥めながら口を開いた。
「敵の姿、気配ともにまったくないね。見事なくらいに掻き消えてるよ」
 フッチの姿をよく見ると、ブライトもそうであるが、体の至る所に引き裂かれた痕
があった。しかし服が引き裂かれているものの、服の下の皮膚には全く傷がなかった。
「アップルさんは、言いに行ったの?」
 目的語はない。
「いいえ、これからよ」
「じゃあ、僕も一緒に行くよ。マイクロトフさんに伝えた方がいいことがあるから…」
「そう、じゃあさっさと行きましょう。外に突っ立っているわけにもいかないものね」
と踵を返してスタスタ歩いていく。


 シュウ達は当然のごとく、あれやこれやと事後処理のため、人にひっきりなしに指
示を与えている。
「シュウ兄さんっ!」
 その人垣を掻き分けてアップル達がほうほうの体で姿を現した。
「アップルか…」
「兄さん、お久しぶりです」
 乱れた髪や服を正しながら、彼の妹弟子はそう言った。
「アップル、無事だったか?」
 何一つ顔色変えずにシュウは問う。
「はい。私は宿屋の方に避難していましたので」
「そちらの被害の方はどうだ?」
「ヒューゴさん達の負傷の度合いがひどくて、今トウタ君に治療を受けている最中で
す。
 その他の外に出ていた人間は、怪我はしたものの天さんのお陰で殆ど治癒されてい
る状態です」
「ヒューゴ殿の傷は酷いのか?」
「いえ、そう深刻に受け止めるほどではありません。ヒューゴさん達も先ほどの魔法
を受けてますので、まぁ…止血帯が必要な程度ですね」
「そうか。
 来て早々にすまんな。こんな事態になって」
 鬱陶しそうに溜息を付いて兄弟子は言葉を吐いた。彼としては、警備状態に自信を
持っていたため、この結果は、非常に不愉快なものでしかなかった。
 それが、空中から魔獣が出てきた、という非常識なものであってもだ。
「本当なら、いろいろと話を聞きたかったのだがな……」
「そうですね。
 兄さん、これからどうしておきましょう?」
「とりあえず連中を宿屋に。朝になるまで外出禁止だと伝えてくれ。こちらが一段落
が着き次第、伝えに人をやる」
「判りました」
 そう応えるアップルの表情は実に落ち着いたものだった。
 そんな妹弟子を複雑な心境でシュウは見ていた。愚痴を言っても埒の明かないこと
であるが、それでも……と、そう思う自分も歳をとってしまったのだなと、自覚する
のシュウだった。





「いってぇ〜っ!!」
窓が割れんばかりの大音声が宿屋に響いた。
「トウタ先生〜、もっとそっとして下さいよ〜」
と涙ながらにヒューゴが訴えた。そんなヒューゴにトウタは苦笑しながら包帯を巻い
ていた。
「それだけ元気でしたら、心配はないようですね」
「そう言う問題なの〜?」
「そう言う問題ですね」
 はい、終わりっ、と言ってヒューゴ達の傷の手当は終わった。
 ユーバーとの戦闘の後、ヒューゴ達は締南の兵によって宿屋に担ぎ込まれた。
 担ぎ込まれた時、無数の刀傷を受け、出血の激しい状態だった。
 命に関わる程…の重傷ではなかったが、それでも予断は許されないもので。締南の
兵の行動は、当然で的確なものであったが、ヒューゴ達としては、非常に不本意以外
の何物でもなかっただろう。
 あの時点で、ヒューゴ達、軍曹、ルシア、フーバー、皆、満身創痍で戦闘が出来る
状態でなかった。それでも戦士たる者として、戦場に身を置いていたかったのだろう。
「外の騒ぎは治まったようだけど、どうなったんだろう?」
 不機嫌さを隠さずに、ヒューゴが漏らす。
「心配することないさ。ミューズの連中も出ているし、他の連中もいるからな」
 ジョー軍曹は、自分の羽毛に付いた血糊を拭き取っていた。
「……」
「とりあえず、今は安静にしているか。この傷では、足手まといにしかならんからな」
 ルシアもキツめのワインを、早速口にしていた。
「ルシア族長、怪我をしているって言うのにお酒は控えて下さい」
と、トウタが制止するが
「堅苦しいことを言うんじゃないよ」
と言ってグラスを仰ぐ。ルシア自身も、早々に戦線離脱した事に、憤りを感じ、その
感情を持て余している様だった。

 背もたれに顎を乗せて。ヒューゴはトウタが直している薬を見ながら、先程起こっ
た出来事を振り返っていた。
「…あいつ……」
「どうしたのですか?」
 焦点の合わない目で言葉を続けた。
「一体、何者なんだ……」
 自分とそう変わらない姿の少年。
 金冠、黄色の肩布をつけたトンファーの少年。
 なのに、自分以上の力の持ち主。
 何度も、ユーバーと剣を交じあわせ、地に膝を付けたのは自分の方だった。
 自分の力量に自信はあった。それでもあいつには勝てず……。苛立ちを抑えきれず
拳をテーブルに殴りつけた。
「折角手当してもらったのに、失礼だぞヒューゴ」
 軍曹はわからんでもないが…、という顔で諫めた。
「分かってる……、けど」
 好戦的なカラヤの少年にとっては屈辱以外でしかなかった。
「……どうやら、外の方も落ち着いたようですね」
 黒い鞄に薬品を片づけながら、トウタが気づいた。
 ガヤガヤと人の声が聞こえるだけで、剣戟の音はすっかりとおさまっている。
 にわかに入り口の方が賑やかになった。
 トウタが首を巡らしてみると多人数の人間が立っているのが分かった。
「皆さん戻ってきたようですよ」
 その言葉と共に、外での戦闘組、十三小隊とゼクセン騎士団が入ってきて、酒場の
座席に各々腰を下ろしていった。
「女将、酒をくれ」
 開口一番、何より先に言ったのがジョーカーのこの一言。
「おい、オッサン。何より先にそれはないだろうがっ」
 向かいの席に座ったエースが呆れ果てた顔で噛み付いた。
「阿呆ッ、こんな状況で酒も無しにやってられるか」
「……そりゃそうだけどよ」
 それ以上エースも追求することはやめにした。
「あたしっ、ソーダ」
「あたしは白のサッパリした奴をちょうだい」
「麦酒」
とジョーカーを皮切りにそれぞれ注文が開始された。

「皆さん、傷の手当の方は大丈夫ですか?」
 勝手に酒をあおっている人間を横目にトウタがとりあえず聞いて回っていた。
「あぁ、先生、心配無用だぜ」
「外にいた連中全員、怪我一つないよ」
ジョーカーとエースがグラスを傾けながら応えた。
「全員、ピンしゃんしてらぁ」
 トウタは、酒場に集った人間を見回したが、誰一人として怪我をしている者などいな
かった。ゲド隊はそれぞれ早速酒を飲んでいる状態だし、ゼクセン騎士団も同様にグラ
スを傾けだした。
「相変わらずの威力のようですね…」
 トウタは苦笑しながら呟いた。
「何だって?」
トウタに一番近い位置にいたエースが聞き返した。
「いえ、フッチさんとアップルさんが見えないのでどうしたのかなって、思いまして…」
「アップルとフッチなら、もうすぐ戻ってくると思うよ。
 何でも、宰相殿にご報告だそうよ」
 間近で会話したクィーンが伝える。
「シュウ軍師にですか…」
「あぁ。とりあえず、今後の事を訊いてくるって言っていたけどね」
「そうですか…」
 トウタとしても、二人の行動は推測出来た為、大した素振りも無く納得した。

「……トウタ先生」
ジョーカーの向かいで、ウィスキーのグラスを傾けていたゲドが口を開いた。
「あっ…、はい?」
思わぬ人間の発言に、周り一体が驚きのために凍った。
 そんな周りにお構いなく、
「先程、少年が居た。金冠の紅い胴衣を着た…、紋章の継承者…」
「…………」
「先生が話せる範囲で良い、聞かせてもらいたいのだが……」
 コトリ…とグラスを机に置く音が響く。
 このゲドの発言。それぞれが気にしていた事だった。
 それぞれが行くあての感情を、酒を呑む事ではぐらかそうとした。
 はぐらかす術がある大人は良い。だが、そうでない存在も居る。
 酒でも済まないならば……。
 ゲド自身、この中で永い時間を真の紋章と共に過ごしている。
 それ故か、このユーバーの言を借りれば、奇跡、といえる今日の出来事をこのまま、
幕を下ろす事を良しと出来なかった。
「………。
 何を訊きたいのですか? 私は以前は…、今のように大人ではなく、軍医手伝いの
ようなものです。
 ゲドさん達がお知りになりたい事柄を知っているかどうか……」
「彼の紋章は一体何なのです?」
「…………」
「俺自身、知っている『真の紋章』の知識はそう広い訳ではない…。
 知っているという点では『五行』の関連でしかない」
 27もの真の紋章があるわけだ。その性質は単純なものから、複雑なものまであるだろう。
 五行の紋章はどちらかといえば、判り易いものと言える。
「…………」


「彼が宿している紋章は、『輝く盾の紋章』よ。
 と言っても、とても不完全な状態、だそうだけど」

 一斉に視線が注がれた先には、はアップルとフッチが立っていた。
「アップルさん、お帰りなさい」
「おぅ軍師さん、お疲れ様〜」
「締南のお偉さんは、何か言ってましたか〜?」
と酔っ払いエースとジョーカーの問いににこやかに答える。
「えぇ。取り合えず、今日はこのまま宿屋からは出ないように、との事よ」
「…今から外に出ようなんて思う、無謀な人間は居ないだろう」
と少々、呆れたようにナッシュが相槌を打つ。
「後、明日予定している代表会議は、少し時間はずれる可能性はあるものの、午前中から
始めるとの事よ」
だから皆さん、お酒は程ほどにね。と笑顔で釘を刺したのだった。
「アップルさん…、あの『輝く盾の紋章』って…?
 それに不完全って……?」
 判らない表情のまま、ヒューゴが訊ねる。彼にしてみれば、聞いた事の無い内容だろう。
「えぇ。彼が宿していた紋章よ。
 その以前は、彼の養父であるゲンカク老師が宿していて、都市同盟の人間にとっては英
雄の証、とも言える紋章ね」
 …だからこそ、シュウは『輝く盾の紋章』を宿している天威を軍主として立てたのだか
ら。
「不完全、とはどういう意味なのだ?アップルさん」
 クリスも眉を顰める。
「彼の紋章は、二つで一つ、と言われているの。元々は一つであったものが、何かのきっ
かけで二つの状態になって…。
 だから彼の持つ紋章だけでは不完全と言われていたわ」
「……、では。今はどうなのだ?」
 先の戦闘で目の当たりにした紋章の力、アップルの言うとおり、複数の紋章の力が発現
されている。
「さぁ。
 私は戦争終結後、早々に締南を離れたから詳しい話は判らないわ」
と、見え見えのシラを切った。
 そんなアップルにどうにか、話を聞きだそうとクリスは逡巡するが、適した言葉が見つ
からない。
「……アップルさん、明日とか、天威…に会えない?」
「ヒューゴ、言葉が過ぎるぞっ! 一国の代表の名を軽々しく呼び捨てるなっ!」
「あっ…、えっ…ごめんっ」
突然のクリスの剣幕に、ヒューゴがたじろぐ。この辺り、堅物であるクリスの当然の反応
だった。
「そんなに堅くならなくても大丈夫よ…」
 大体、ここには締南の人間はいないんだから…、とフォローに回る。
「…で、アップルさん。あの会えないかな…?」
 という一縷の望みをかけたヒューゴの言葉は


「無理ですね」
「無理だね」
「無理だわ」

の、トウタ、フッチ、アップル三人合致の言葉に玉砕した。
「どうしてっ!」
締南側に何の伺いも立てていないのに、会談を拒否される理由が判らず、ヒューゴが叫ぶ。
「……、何も無かったら、会えたかも知れないんですけど…」
と言葉尻を濁しながら、トウタ。
「あの戦闘を行った後だと、まず無理でしょうね。天威さん達本人は気にしなくても…」
フッチが思案深く答える。
「…?、さっきの戦闘、何か問題があるのか?」
ゲドが不安を覚える。
「少し話したでしょう。天さんの紋章は不完全なものだったって」
「あぁ…」
「その所為もあって、彼、戦時中、よく倒れていたの…」
 衝撃の内容に、紋章の継承者達は息を飲む。
「倒れていた…とは、どういう事だ」
 ゲド自身、使い過ぎた事はあるが、倒れる、という目に見える状況に陥る事はなかった。
「彼の持つ『輝く盾の紋章』は名の通り、盾の力、癒しの力を持っていたわ…。
 その力は絶大で、戦場において、軍団単位で兵を癒す事が出来ていたの…」
「…そんなにも、強い力を持っていたの…?」
「えぇ。でも言ったように、彼の紋章は欠けた状態…、不完全であった為に、その負荷が
何度も彼自身を襲ったわ。
 紋章を使った後、何の前触れ無く倒れて…」
 そう答えるアップルの表情は重く暗いもの。
「我々…、私の師であるホウアン先生も、天威さんには紋章の力を極力使わないように、
進言していましたが、状況が状況でしたから…」
とトウタも口を噤む。
「…今現在はどうか知らないけど、さっき、天さんは紋章の力を解放した。
 イーヴァさんとシエラさんの紋章の力を合わせる形で。
 そんな使い方した後なら、きっと天さんへの影響は大きいだろうからね。
 シュウ軍師達はきっと、会談なんて許可できないよ…」

 同じ街に居るというのに、会えない事に、ヒューゴはただ拳を握り締めるだけだった。
 クリスもゲドも、それぞれまた再び、会えるのなら、と考えていたが…。
 フッチが話した後、それぞれは解散する事となり、それぞれが各自の部屋に戻った。
 目の当たりにした真の紋章の力、英雄の姿に、それぞれは砂を噛む思いだった。
 

 


                                              
(last up 2007)