翌日、『炎の運び手』一同は、予定通り締南国に向けて出発することとなった。
後、サポートに万が一を考え、トウタを同伴させることとなった。
結果、総数15人(?)が馬車に乗りこんだ。
フッチとブライト、フーバーは勿論の事ながら馬車に乗る事が出来ず、フッチは
「どうせ僕は、ブライトに乗っているので、辺りを哨戒しています」
と言って、ブライトと共に空を飛ぶ事になったのだ。そしてフーバーもこれに追従
した。
馬車は一応6人乗りで3つの馬車に、それぞれ乗る事となり、一台目に女性陣が、
次いで、ヒューゴ、ジョー軍曹、トウタ、パーシヴァル、ボルスが乗り、最後にハ
ルモニア関係一同の組み合わせとなった。
マチルダ騎士団のマイクロトフは馬車に便乗せず、先頭に立ち兵を率いた。
さて、ここからは、三つの馬車の中で交わされた会話。一体どのような会話が繰
り広げられていたのだろうか……。
「いや?、偶には良いモンだねぇ。どうにもうちの所の面子はムサくって仕方がな
いからね……」
と室内でのびをして言ったのは、ハルモニア神聖国辺境警備隊十二小隊の隊員、ク
ィーンだった。
「アイラが来てからはまだずいぶんマシになったけど……」
「そんなに酷いものなのか?」
と同様にむさ苦しい男共の中に咲く一輪の花・クリスが尋ねた。
「あぁ、酷いったら話せたモンじゃないよ」
「私はそうは思ったことがないがな。ある意味、当たり前のようなものではないの
か?」
「ふ…、判ってないね。あんたんとこは騎士じゃないの。うちの所は誓いも規則も
何もなしだよ。
それに、目の保養対象いるかいないかで大違いだよ」
「???」
当然、パーシヴァル、ボルスである。
「それにしても、久しぶりの締南国ね」
窓際に座って移りゆく景色を見ながらアップルがポツリ呟いた。
「一体どんな風に変わったのかしら?」
「そうですね、外見的な戦争の傷跡はなくなりましたね。それでも、まだまですが」
「…、一時期、トランには戻ってたけれど、あちらにはそう留まらなかったから懐
かしいわ……」
「アップル、さんはトランの人なのか?」
アップルとは反対側の風景を興味深々で見ていたアイラが尋ねた。
「ええ、生まれは違うのだけれどトランのセイカという村が、私が育った場所よ」
「じゃあ、どうして締南国に行ったんだ?」
「私の師であるマッシュ先生の伝記を完成させたくて旅をしていた時に、偶々…
戦にあってね……」
まぁ、成り行き、とはいかないけれどね……、そう答えた。
「ルシア族長。族長も締南国に行かれるのは、久しぶりなのですか?」
黙って腕を組みながら、座っていたルシアは、
「そうだな。十五年前の戦争以来そちらには行っていないからな……」
「あの、アップルさんとルシア族長は、敵同士だったって事ですか?」
「そうなるな」
「そうね。私とテレーズさんはそうなるわ。
私は副軍師だったし、テレーズさんはグリンヒル市長代行で大将軍だったから
ね」
「アップルさん達は、ルシア族長と顔を合わしていたのか?」
「私はグリンヒルとルルノイエで」
「私は、戦場と……、銀嶺城で」
「インリン城?」
「私達の本拠地であった城の事よ」
「そんな城でどうして?」
と、ルシアの方を見てみたがルシアはルシアで顔を背けていた。
「単独潜入して、天威さんの首級を挙げようとしたの」
「……」
「…………・」
アイラは目を丸くして驚き、クリスとクィーンも無謀な、と言う風な顔をしていた。
「それで、どうなったんだ?」
流石のクリスも参入した。
「勿論、失敗」
「……」
「室内での戦闘だったからね。それはもう派手に下まで聞こえていたわ」
武器での攻撃は勿論、魔法も使用して戦闘を行っていたため、天威の部屋はメチャ
クチャになったのを記憶している。
「昔から、むぼ…・、いや、活動的だったのだな」
とクリスが言った。
「……。あの時、それが最良の手だと私は思ったから、それを行ったまでだ」
そう言いつつも、ルシアの表情は少々晴れぬ何かがあった。
「ルシア族長、15年前の戦いってどんなものだったのですか?」
15年前と言えば、アイラは丁度一歳になった頃。その当時のことなど知る由もない。
「……統一戦争。
くだらん戦いだったな。それに今でも、よく締南はハイランドに打ち勝ったと思
っている」
運が良かっただけかもしれんな、と付け足した。
何とも一方的な言いようではあるが、それが統一戦争の感想なのだろう。アイラ
はただ頷くしかなかったし、クリスも勿論知るわけではないから、何もその事に関
して追求はしなかったが……。
「ルシアさんは、あの戦いを『くだらない』と?」
隣に座るルシアの表情を見ずに、テレーズが問うた。
「あぁ、そうとも、テレーズ。くだらない戦いさ。
あの時、悪戯に国力を消耗しあっているだけでしかない争いにしか見えなかった
がな」
「………………。
では、質問をしますわ。例え話の」
「何だ?」
「ハルモニアがグラスランド・ゼクセンに侵攻してきた、と言う仮定から。
圧倒的な兵量によりシックスクランは次々にハルモニアの占領下におかれ、ゼク
センも自国領を守るだけで手一杯。残されたクランは、カラヤクランのみ。
周囲はハルモニアによって包囲され、他のクランからの援軍は期待できない。
貴方は族長として、どうなされます?」
「テレーズ、我がカラヤと愚弄しているのか?」
「どうなされるのです?」
「無論、戦う。それが我々の誇りだっ!!
戦わずしてどうするというのだ? 死か隷属か。そのどちらかしかないのであろ
う。我らは死など恐れぬ。そして隷属など受け入れぬっ!!」
そう言い張った瞳は凄まじく殺気を帯びた眼光であった。
「そうでしょうね」
テレーズはルシアの方を見ることなく、そう言った。
「あの時。我々もそうでした。ハイランドに対して、ルカ・ブライトに対して、我
々がとれた手段はただ一つ、ハイランドに対して打ち勝つ、それ以外にありません
でした。
そうでなければ、デュナンの地はルカ・ブライトによってその大地の住人の血で
紅く染め上げられていたでしょう。
我々が生き残るには、ハイランドを打ち勝つしかなかった。
未来に戦いを残さないためには、勝つしかなかった」
「…………」
「ルシアさん、先程貴方は統一戦争を『くだらない』と言った。
でも、私が問いかけた内容は私達が戦った理由と何ら変わりはありません。
貴方は、グラスランドに住む者として、クランの族長としてその時点で、最良と思
われる手段を執るでしょう。
貴方が我々グリンヒルを憎悪するのは存じてます。そしてそれは当然のことです。
私は、その事に関して何も言いません。何も言えません。
ですが、あの戦いを愚弄しないでください。
我々締南の者にとって、あの戦いは『くだらない』戦いなどではないのですから。
そして、『くだらない』戦いなどに命を懸ける者などいないのですから……」
テレーズはルシアの方を真っ直ぐと見つめて言葉を終えた。
少し間がおかれた後、ルシアは顔そらし、
「少々、口が過ぎたようだ。不快な思いをさせたのであるのなら、詫びる」
そう言って、窓の外に目をやった。
三つの中の一つの馬車。二つ目に位置し、中にはヒューゴ、ジョー軍曹、トウタ、
パーシヴァル、ボルスが乗っていた。
様々に移り変わる外の景色を見ながらヒューゴが口を開いた。
「俺、ついこの間までシックスクランの中でも近くのクランしか知らなかったのに、
この短い間にブラス城に行って、ビネ・デル・ゼクセにって、カレリアに行って。
グラスランド内を動き回ってたら、今度は隣国の締南国に行くことになるなんて…
思っても見なかったな…」
「はっはっは。そうだな、俺だってこの短い間にこんなにも色々なところに行くと
は思ってなかったさ」
そう白いふかふかのお腹を揺らしながらジョー軍曹は豪快に答えた。
「軍曹は締南国に行ったことがあるのか?」
「いや、国境近くまでは行ったことがあったが、締南国にはいること自体、今回が
初めてだな」
「じゃあ、どんな国か知らないのかい?」
「知識として知っている程度だな」
「どんなの?」
「まぁ、簡単に説明すれば。
締南国、と言う国自体はそう古くはない。15年前の統一戦争後に出来た国だが、
それ以前から、ハイランドとジョンストン都市同盟のまぁ二つに別れていたからな、
それなりに古い国だよ。
地域的なものとしては、北から南へと延びている国だから、北のハイランドは当
然寒いし、南のサウスウィンドウは暑くはないが、温帯ってところかな?」
「ハイランド?サウスウィンドウ?」
「締南国にある街の名前だ。まぁ、俺達風に言うと、クランみたいなモノと考えて
くれればいい」
「街……、締南国にはどれくらい、街があるんだ?」
「……。う〜ん、そこまでは知らんなぁ」
とヘルメットを掻いていると、
「地域の代表都市はミューズ、グリンヒル、マチルダ、トゥーリバー、サウスウィ
ンドウ、ルルノイエの六つですよ」
と助け船を出したのは、ミューズ出身者のトウタだった。
「グラスランドのシックスクランと同じ数だね」
「そうですね。これは奇遇ですね……」
「トウタ先生は締南国に戻るのは久しぶりなのか?」
「…、そう、なりますね。ホウアン先生の元を出てからはずっと患者さんの病気を
治すのに精一杯だったから、どのくらい前だったか、憶えていないな……」
丁度良い機会だったのかもしれませんね。とにっこりと笑った。
「俺達、何処に行くのかな?」
「テレーズさんの話だと、締南国代表が集まって会議を行うと仰っていましたから、
当然、ミューズ市になるでしょうね」
「ミューズ?」
「ええ。締南国筆頭都市ミューズ。ジョウストン都市同盟の時代から盟主として栄
え、過去、都市同盟を結んだ場所であるジョウストンの丘があり、各都市との会議
では必ず、このジョウストンの丘が使用されているんです」
「トウタ殿、締南国は全ての代表が会議に出席されるのでしょうか?」
トウタの隣で今まで黙って聞いていたパーシヴァルが尋ねた。
「都市代表の方は恐らく全て出席されるでしょうが……」
「が?」
「城の方から、一体誰が出席するかは判りませんね」
少し顔を顰めてトウタは言葉を選んだ。
「国主殿、御自ら出られるかどうかは定かでない、と?」
「ええ。ですがグラスランドに派兵するのであるのなら、都市代表だけで決めるは
ずはありません。クラウスさんが、グラスランドにいることを考えれば、恐らく、
シュウ軍師…、シュウ宰相は出席されるでしょう。
ですが、天威さんは……」
この時のトウタの表情は複雑の極み、だった。
「天威? 国主が会議に出ないのか?」
不信感を露わにしてヒューゴが尋ねた。
彼の不快感は当然である。何と言っても、クラン代表として、族長の息子が休戦
協定の親書を持っていったというのに無下に返された経験を持つ。
「国主ともなると、お忙しいですからね。締南国の問題も色々抱えているでしょう
し、都市代表と国主と宰相、揃って出席するとなると、その事だけに集中すると言
うことになりますから、他の執務を中断する事になります……」
ヒューゴの疑問は当然のものだが、グラスランドと締南を比較することに誤りが
ある。国の大きさから言って、グラスランド全体と締南国では当然の如く、締南国
が広大な国土を誇る。それ故の都市、それ故人口。全てにおいて数に違いがある為、
仕事量も尋常なものではない。
今回の会議。ヒューゴ達としては当然の待遇だと思っているかもしれないが、外
向的に、国力等をふまえて考えると、破格の待遇である。
正式な国として存在しているわけでもなく、国力から言えば格段の差があるにも
関わらず、一地域の代表に対して、締南国は代表を全て揃えた状態で会議を開くと
いうものであるのだから。
「とか言っておいて、代表者代理で話を済まされたらたまったモンじゃないけどな」
とかなり疑っているヒューゴである。ゼクセンの二人にとっては耳の痛い話である。
トウタは苦笑しながら、
「それはありませんよ。それは私が保証します。
締南にとっても、この問題は由々しきものです。締南の方々にとって皆さんが持
つ情報は何より欲しているものですから…」
「……」
「…ですが……、天威さんは出席しないかもしれません」
「何で?」
「……、以前から表に出ることが殆どありませんでしたから……」
そう言うトウタの表情は、何か物憂げな表情をしていた。
ヒューゴはそれ以上、追求することを止めることにした。今のトウタの表情が一
体何を意味しているのか、判らなかったし、訊くべき事ではない、そんな思いを感
じたのだった。
三台目の馬車の中は、見るも無惨なほどむさ苦しい世界が展開されていた。
といっても、むさ苦しい代名詞は中二人ほどで、他は青年と壮年なのだが。
ナッシュは先程から、馬車の窓を開け片腕を出していた。
「おい、ナッシュ。昔の馴染みとして忠告しておくが、本業の方、あまり派手に活
動せぬ方がいいのではないのか?」
ナッシュの隣で腕を組んで目を伏せていたジョーカーが目配せをした。
「そう、おおっぴらに動いてるつもりはないんだけどな」
「どうだか。お主はいつも詰めが甘いからの。思っているよりも、勘づかれている
のではないのか?」
「……。それは困る」
と普段飄々とした表情が変わることのない男は、この時だけ、真面目な表情になっ
ていた。
ナッシュはジョーカーの話を憮然とした表情で聞きながら、今まで窓から出して
いた腕を引っ込めると、その手の中には、茶色の小さな鳩が収まっていた。
「ナッシュさん、何だい、その鳥は?」
エースは興味津々でのぞき込んだ。
「……野鳩、土鳩……?」
ジャックがポツリと呟くと、今のセリフに気分を害したのか、ぴーぴーと鳴き声を
上げた。
そうかと思うと、
「ナッシュ、レンラク。ナッシュ、カネ」
と騒ぎ立てた。
「こいつ、喋るのか?」
土肝を抜かれたエースがまじまじと見入っていた。
「まぁ、ね」
とナッシュは慣れた手つきで、ドミンゲスJrの背に付けられている通信筒から伝書
をとると、直ぐさまドミンゲスを放したのだった。
ナッシュは伝書を一読すると、早々に懐にしまい込み、盛大な溜め息をついたの
だった。
「……悪い知らせ、だったのか?」
何処を見るともなしにジャックが尋ねた。
「人使いの荒い上司を持つと苦労するってところかな」
「お主の日頃の行いが悪いのではないのか?」
「日頃の行い以前に俺は、運が悪すぎるよ」
「ナッシュさん、あんたも俺と同様に苦労しているようだな」
エースは一人納得したようにしみじみ、感慨深く頷いていた。
「エース、お主の場合は日頃の行いではなく、金遣いが悪いのであろうが」
「懐の具合も考えずに酒を飲むような人間に言われたかぁないね」
とまたしても、いつものネタで二人は舌戦が開始されるのであった。
「で、何が書かれていたのだ?」
流石に気になったのか。珍しくゲドが口を開いた。
「一応、任務内容は秘密って事になってるんだけどな」
「……・・」
と言っても、ナッシュがハルモニアの特務任務潜入員であることは周知の事実であ
るし、今更隠しようのないものだった。
「まぁ頃合いを見計らって、本国に帰還しろとさ。
色々と報告しなきゃならん事があるからな。
それと締南国内の情勢をある程度、無理のない範囲で調べておけだとさ」
「……」
「ほんとにあの人には苦労させられるよ。まぁ15年前、借りを作ってしまったのは
確かだけどね」
「15年前? あの時のカレリアの騒動か?」
ジョーカーが12小隊に移る直前のこと。彼もまたナッシュの一悶着に関わっている
人物である。
「ま、ね」
「確かに、本国の方では水面下でかなりの動きがあったようだからな」
風の噂でしか、事の顛末を耳にしていない為、真偽はかなりあやふやなものがある
が、少々その話で場が持ちきりになったのを憶えていた。
「んで、15年ぶりに締南国に入国、か」
今回は大手を振ってだが、前回は潜入だったからな。
「『今回』は指令なのか?それともお主の興味なのか?」
「一応、指令なんだけどな。
まぁ曰く因縁のある場所だし、15年前の指令を果たすのもいいかなってね」
柄にもなく。
「15年前の指令?」
ジョーカーもそこまでは知っているものではなかった。
「『真なる27の紋章』についての調査。
まぁ大したことは出来なかったがな」
確認が取れたわけでもないし、『月の紋章』がどうなったか分からずじまい、『獣
の紋章』の使用は確認されたが、戦争終結時に行方が知れず。他にも『真の紋章』
が出現した噂を聞かないわけではないが正確な確認は取れず、結果的には踏んだり
蹴ったりである。
「……」
真の紋章の継承者であるゲドは、少々複雑な表情をしていた。
「まぁ、そう言うこともあって、締南国に行ってみようかな、てところだな」
彼の表情には、過去を楽しむ懐かしさが表れていたが
「…………案外、誰かに会いたかった、……なんて事だったりな」
とポツリ、核心をついた一言をジャック。
彼がナンパ男であることは、『炎の運び手』中公認の事実である。この事は十二小
隊のエースを上回るほど、との噂が立つほどである。
「……」
そしてナッシュ自身、否定できないあたり、彼である由縁であった。
ヒューゴ一行は、アクシデントも起こることなく全くと言っていいほど平穏な状
況で締南国に入国することが出来た。当然、マチルダ騎士団の護衛があったわけで
あるが、戦闘慣れした猛者達にとっては、少々退屈の虫が疼きだしてくるぐらいの
平穏さだった。
ヒューゴは締南国に入った時から、馬車の窓から体が離れることがなかった。
自分の目の前に広がる景色。その景色が自分達グラスランドとは全く違う景色に
驚き、見入っていたのだった。
「軍曹…、世界が緑色だよ」
それが第一の感想だった。
草原の広がるグラスランドに対して、締南国は木々の緑が広がる大地で、ヒュー
ゴの言うとおり、世界が緑色をなしているだろう。
緑が多い故の空の青の深度。様々な草色、緑色。ヒューゴにとって新鮮な景色で
溢れかえっていた。
「軍曹、空気が乾いてないんだね」
「そうさな。森や山が多い分、雨が締南国では多いからな。グラスランドみたいに
は乾燥していないよ」
「……だから、なんだか水っぽいんだね」
乾燥しきっているグラスランド生まれのヒューゴにとっては、湿度は慣れていない
もので流石に、不快感を感じたようだった。
ヒューゴと共に同席しているパーシヴァル達も外の風景を見ながら、
「しかし、こうしてマチルダ騎士団に護衛されながら締南国に入るなど、思っても
見なかったな」
「確かに。入ることがあるとすれば、クリス様に同行するか、もしくは戦ででしか
ありえんと思っていたからな」
ボルスもヒューゴ同様に外の景色を堪能していた。
「まぁ今回は招待されたのだ。じっくりと締南国がいかなるものか、見聞を広めて
おくとしよう」
次、この様な機会があるか判らないからな、とパーシヴァルは締めくくった。
ルシア達が乗る馬車では当然、ヒューゴ同様にアイラも外の景色に目を奪われて
いた。
ヒューゴに比べてアイラはゲドと同行していたため、様々な土地を見ていたがそ
れでも珍しいものには変わらず、目玉がこぼれ落ちそうなほど目を見開いていた。
「この調子で行くと、明日の昼間にはミューズには着きそうね」
「そうですね。道中特に問題もなく来ましたから、このまま何事もなくミューズに
着ければいいですね」
アップルとテレーズ、流石に地の利があるため、現在地とミューズまでの道のりを
把握していた。
「いいねぇ。早く着いて欲しいモノだよ。
こう長い間馬車に揺られているなんてそうそう体験できるものでもないけど、ち
ょっと長すぎるかね」
段々尻が痛くなってきたよ、とクィーンは辟易していた。
(last up 2003) ← →