暁降りの間まで 10 




 天威が告げたとおり、三日後にはビッキーの杖は修復された。
 トランから急ぎで戻ってきたテッサイに天威が事の顛末を告げるとひげを蓄えた口で大
笑いし、
「畏まりましたぞ、天威殿。このような事態でこそ、腕の振るい甲斐があるというもので
すっ」
と答えて、早速工房に篭り、作業に取り掛かったのだった。
 かくして、テッサイの尽力によりビッキーの杖は見事にレベルアップされ手渡された。
 それを見たヒューゴ一同は、安堵の溜息を吐いたのだった。







 西からの来訪者達が去った後、彼らを見送った天威はしばらくその場に立ち尽くしてい
た。
 去った場所はビッキーお決まりの瞬きの大鏡の前。
 がらんどうになったその場所を一通り、何かの感慨があるのか定かではないが眺めた。
「天」
 振り向くとイーヴァとシエラが立っていて。
「やっと行ったようだね」
「ふん、礼儀のなってない輩共よ…。居なくのうて清々するわ…」
 二人の立ち姿は、今まで城で晒していた寛いだ姿ではなく、それぞれが馴染み深い姿、
イーヴァは赤の中華服に足元にはゲートルを巻き棍を持った姿井出達で、シエラは白のツ
ーピースドレスの上に紫の外套を纏った姿だった。
「こちらの準備も万全だよ」
「後はそなたのみよ」
「僕はいつでも行けますよ?」
 シエラさんをお待たせするような事はしませんよ。と笑顔を見せる。
「じゃあ、僕たちも行こうか」
とイーヴァが背後に目配せすると、ひょこっと姿を見せたのは
「お主も難儀であったのう。まさかあちらのお主も此処に来るとはな…」
「えへ〜、でも珍しい事じゃないですし〜」
 先程城を去った筈の、杖を抱えたビッキーだった。
 ヒューゴ達が此処に来る少し前に、このビッキーは銀嶺城に訪れていたのだった。三人
に事の顛末を伝えに…。
 幸か不幸か偶然か必然か蓋然か…。
 ビッキーが訪れたのは、同時代ではなくまだ、事が発生していない過去であったわけだ
が……。
 天威は一歩下がって傍観していたシュウから旅道具一式と愛用のトンファーを受け取っ
た。
 それぞれ…心にある想いは同じもので、その想い故に会いに行く。
 優しすぎる故に絶望した彼に会いに…。
 全てに決着を着けるべく約束の地にいる彼に、夢は夢であって現実ではない事を伝えに…。


「じゃあ行来ましょう。ルックに会いに…」
 












 (last up 2008 04/7)   
 更新一ヶ月以内に出来てよかった。
 かなり強引な気配ですが、とりあえず『暁降ちの間まで』はこれにて完でございます。
 途中から激しく失速したきらいがあって見るも読むも無残な結果でございます。
 でも長い間、表現したかった事は書けたので自己満足出来ています。
 文才のなさが悔やまれますが……。

 次回…があるのなら、この続きの遺跡でのやり取りとなるでしょう。
 書くかどうか、自身のバイタリティの問題ですが、宜しければ気長にお待ち下さい。

 駄作にお付き合い頂き、ありがとうございます。